レーザープロジェクタの仕様書などに記載されている30kとか40kというのは一般に言うところの「スキャンスピード」です。これは再生装置が信号を出力する際のスピードを表したもので、単位はポイント/秒です。残念ながら、プロジェクタに搭載されるスキャナの性能を表すものではありません。では、何故プロジェクタの仕様書に30kなどと書かれているのでしょうか。
プロジェクタの仕様書に30kとある場合、そのプロジェクタのスキャナを駆動する電気回路(ドライバ)を調整する際に再生装置側のスキャンスピードの設定をが30k(3万ポイント/秒)にしています。と言う意味になります。数値が大きいほど性能が良さそうに見えますが、スキャナの性能には全く関係がありません。その理由は以下の通りです。
ILDAの規定ではドライバーを調整する際、30kはテストパターンの大きさをスキャナからでたレーザーの投影角度が8度、12kのテストパターンは20度となっています。
ILDAテストパターンには2種類あり、12k「ildatest.ILD」と30k「ildatstb.ILD」の2つです。12kのテストパターンを20度になるよう大きさを調整したのち、30k用のテストパターンを表示すると、内側の12kと同じ部分は8度になるようになっています。
したがって、12kのテストパターンを小さくして8度になるようにし、スキャンスピードの設定を30kにすれば12kのテストパターンを30kの調整にも使用できます。このため、12k用のテストパターンの左下には12/30kと書かれています。
スキャナドライバを再調整しないにも関わらず、なぜ12k用テストパターンは異なるスキャンスピードに使用できるのでしょうか。
12kと30kでは2.5倍のスピードがあります。スキャンスピードの単位はポイント/秒で、1秒間に何ポイント分出力するかという意味です。12kでは1秒間に1万2千ポイント、30kでは3万ポイントです。これは再生装置の出力スピードを表すものです。これに対し、スキャナーの性能はある場所からある別の場所までどのくらい早く移動できるかで評価されます。このことをスキャナのステップ応答といいます。ステップ応答が短いほど、スキャナが早く動いていることになります。スキャナが動くということはどのくらい角度が動くかということです。ステップ応答が良いということは同じ角度を短い時間で移動できることになります。これを「角速度が速い」と言います。同じテストパターンを20度から8度へ小さくするということは、角速度を遅くすることを意味します。20度を8度にしているので、丁度2.5倍遅くなります。12kと30kでは再生速度が2.5倍違います、つまり、テストパターンを30kで8度の大きさで表示した場合と12kで20度の大きさで表示した場合とはスキャナの角速度は同じだということです。
これがテストパターン左下に12/30kと書かれていることの理由です。
つまり、このテストパターンを12kで出力し、プロジェクタ側で20度に調整されている場合と30kで出力し、プロジェクタ側で8度に調整されている場合は、スキャナーの動くスピードは同じということです。
スキャナの性能評価をどのようにするかについては、「スキャナの性能評価」の項を参照ください。